札沼線を受け継ぐ「滝川浦臼線」
滝川発祥という味付ジンギスカンを昼食とし、滝川市内を軽く一回り。
雪国らしくアーケードが張り巡らされ、一応駅前らしい体裁は整ってはいるものの、やはり寂れている感は否めない。駅前の再開発ビルらしきものも、核店舗のスーパーが撤退したのか、専ら高齢者の社交場としての機能しか持っていないようだった。
滝川駅のみどりの窓口で、浦臼→石狩月形の乗車券を買っておく。浦臼駅は拠点駅の一つではあるがやはり無人駅のため、乗車券の購入はできず、整理券での精算となる。ただ、石狩月形→札幌(白石/手稲)の乗車券は、ピンク色の常備券目当てで買っていたため、不足分は浦臼→石狩月形のみ。廃止が決まっているなかで乗車券を買っておきたかったので、滝川駅で買っておいたのだ。
周囲は札幌へのSきっぷ(特急自由席の往復割引きっぷ)を求める客ばかりで、券売機も1台あったが稼働率は芳しくない様子。券売機の隣に窓口があっては、窓口に流れるのも仕方ないのかも。いずれにせよ、札幌・旭川への特急が頻発する函館本線は、キハ40の単行がトコトコと走るだけの札沼線とは大違い。特急スーパーカムイがスーッと入ってきて、猛ダッシュで出て行く。時間の流れも、どことなく忙しない。
さて、これから乗る北海道中央バス「滝川浦臼線」は、滝川駅前バスターミナルの1番から出発する。
もともとは国鉄バス→JR北海道バスの「石狩線」として運行されていたもので、滝川駅―新十津川役場―浦臼駅―石狩新宮(晩生内駅付近)―石狩月形駅の「石狩本線」、滝川駅―雨竜市街―碧水市街―石狩沼田駅の「沼田線」、浦臼駅―奈井江駅などの支線からなるバスネットワークを構築していた。1943年~44年の石狩当別―石狩沼田間の札沼線戦時休止に伴う代行輸送に端を発し、1972年の新十津川―石狩沼田間の部分廃止の際は「沼田線」として引き継ぎ、以来運行を続けてきたが、2003年に全面撤退。北海道中央バス滝川浦臼線は、この時に石狩本線のうち、滝川駅―新十津川駅―浦臼駅を北海道中央バスが引き継いだものだ。なお、滝川浦臼線へ引き継がれなかった浦臼駅―石狩新宮―石狩月形駅間のうち、浦臼駅―石狩新宮の浦臼町内は浦臼町営バス(石狩新宮→浦臼駅行きは平日朝1本、浦臼駅→石狩新宮行きは平日夕1本のみの運転)にかろうじて引き継がれたが、石狩新宮―石狩月形駅間は札沼線と並行しているため、廃止されている。
かつての滝川浦臼線は滝川駅北隣の「滝川ターミナル」発着だったが、2018年4月から整備が完了した滝川駅前広場に移転し、JRとバスの乗り換えがより便利になった。クルマ社会の中であっても、きちんと駅が交通ターミナルとして変わらず機能し続けられるように投資がなされており、この姿勢は頼もしい。裏を返せば、まだまだJRとバスを乗り継ぐ利用が相当数あるということであり、郊外線を除いてどの路線も1時間1本を確保しているダイヤにも、それが現れている。
ただ、12:35発の滝川浦臼線・浦臼駅行きを待つ乗客は、自分の他にはわずか2名。土休日は7:10、12:35、15:10、18:00の1日4便が走り、12:35発は始発以来約5時間半後の運行なのであるが、他の乗客がいないというのも、いかにも寂しい。最も、お昼すぐとあってはまだ浦臼・新十津川→滝川への流れの方が強いだろうし、こんな時間帯に純農業地帯の浦臼へバスで向かう人など、そもそもいないということもあろう。この便は、むしろ浦臼駅13:22発→滝川駅前14:00着の便への送り込みの側面が強いのかもしれない。
12:35、滝川駅前発。北海道中央バス滝川浦臼線・浦臼駅行き。
滝川駅前を出る時点では他の乗客は僅か2名だったが、「NTT前」で3名、線路を越えた「西町」で1名、「銀河団地」でも1名を乗せ、ようやく乗合バスらしい体裁が整った。
次の「西高入口」では1名降車・1名乗車と、市内線区間らしい乗り降りが見られた。西高入口を出たところで雄大なる石狩川を渡り、滝川市と新十津川町の境を越える。
こちらも新十津川役場を経由するため、滝新線を補完する機能も持つ。しかし滝新線とは異なり、こちらは郊外線のため、上流側の石狩川橋・新十津川橋を渡り、滝新線とは異なるルートを採る。そのためか、独自区間となる橋本町では1名が降車。とはいえ、橋本町経由は1〜2時間おきであり、純然たる市内交通とは異なる面が見られる。
滝川駅前から11分・12:46に新十津川役場着、3名が降りていく。それと同時に乗車も2名ある。ここからは札沼線が浦臼まで並行するが、列車が1日1往復しか走らないといえど、日常的な利用がないわけではないことが窺える。
3つ先の「青葉」でも1名が乗車。ここまでは新十津川の中心部にあたり、それなりに歩行者の姿もある。しかし、国道275号に入ると、あっという間に広大な農地が広がる。
主要経由地のひとつとされる「花月市街」は、札沼線下徳富駅に近い。新十津川市街の「青葉」から10分ほど動きがなかったが、久しぶりに「市街」と名のつくだけあって、1名が降車。
新十津川町内から乗ってきた父と子の二人組は、13:06着の「鶴沼公園前」で降りていった。鶴沼公園は浦臼町の観光スポットの一つで、キャンプ場とアスレチックを備えた広大な公園だそう。晴れているとはいえどこも雪深いが、公園まで遊びに来たのだろう。雪国の子供は、雪が積もっていようがお構いなしなのだろうか…逞しくなるわけだ。ちなみに、札沼線であれば「鶴沼」駅が最寄りとなるが、鶴沼駅の最寄りバス停は鶴沼公園前の一つ手前「鶴沼市街」となり、約1km離れている。
鶴沼公園前からは再び貸切となってしまい、僕一人を乗せたバスは、ほどなく浦臼の市街地に入っていく。
最後のバス停、「浦臼市街」を過ぎると国道275号から逸れ、駅前ロータリーへ入る。
13:13、浦臼駅着。
鶴沼公園前から浦臼駅までは正真正銘貸切となってしまったが、滝川─新十津川の区間利用はもちろん、新十津川─浦臼間の札沼線並行区間だけの乗り降りもあり、決して人がいない場所ではないということを改めて認識した。札沼線と違い、滝川に繋がっているからこその利便性があることに、バスは支えられている。
難点があるとすれば、平日と土休日で大幅に時刻が異なり、覚えにくい点だ。平日は滝川駅前発8:15、12:15、14:15、16:20、19:28なのに対し、土休日は7:10、12:35、15:10、18:00と、運転間隔ばかりか、始発・最終の時刻まで異なる。平日は通学、土休日は観光と、異なる客層に対応していると言えなくもないのだが、平日にしても16:20のつぎが19:28というのは、運転間隔が開きすぎているように見受けられる。バスの時間が合わず、親御さんがクルマで送り迎えするようなケースもあるのではないだろうか。そのあたりがもう少し弾力的になれば、バスはもっと地域に資する存在になるはずだ。
滝川浦臼線は、これからも浦臼・新十津川と滝川を結ぶ幹線として、立派に役目を果たしていくことだろう。
(つづく)