ローカル線はどこへ行く
かくして、札沼線は姿を消すことになった。北海道のローカル線、いや、ローカル線問題の論点が、札沼線には詰まっているように思う。つまるところ、札沼線に足りなかったものを持っているローカル線は、鉄道としての使命をまだまだ果たしうるのではないかということだ。
それは、以下の5点となるだろう。
①大都市への特急や直通列車などのアクセス手段を持っているか
②沿線に有力な都市を持っているか
③起点・終点で他路線に繋がるネットワーク性を持っているか
④その路線自体が観光資源となり得るか
⑤今後①〜④のいずれかの要素を獲得し得るか
札沼線は、①こそ近年まで札幌直通列車が全線で走っており、⑤も滝川駅乗り入れが取り沙汰された時期もあったが、いずれも喪失してしまった。新十津川行きが観光列車と化している今であれば④も当てはまるが、一過性のブームに過ぎない。
北海道でも、札幌直通列車を持たず、沿線にさしたる都市も持たず、ネットワーク性も持たない日高本線鵡川―様似間や、留萌本線深川―留萌間といった路線が廃止の危機に瀕している。そして、長大本線の末端区間である宗谷本線名寄―稚内間、根室本線釧路―根室間といった「さいはての鉄路」ですらも例外ではない。また、ネットワーク性を持っている根室本線富良野―新得間、釧網本線東釧路―網走間、さらには道央とオホーツク海沿岸地域を結ぶ幹線・石北本線の全線ですらも、危機的な状況が伝えられている。
JR北海道:5割維持困難 事業見直し、13線区発表 – 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20161119/ddr/001/020/003000c
これら鉄道が生きる道は、①〜④のどれかを獲得し、鉄道としての使命を果たし得るかどうかだ。特に根室本線富良野〜新得、釧網本線、および石北本線は、その沿線に富良野や知床、オホーツク海といった観光資源を有し、道央から道東に至る周遊観光ルートを形成するには不可欠な存在であることから、バスでは代わりがきかない。赤字だけを理由として廃止するのは、社会的な損失であると感じる。
しかしながら、小さな規模の観光列車を除き、これら路線の観光活用が進んでいるとはまだまだ言い難い。札幌から観光地に向けた直通特急・快速を設定したり、秋田・青森を走る五能線を救った快速「リゾートしらかみ」のようなクルージングトレインを運転するなど、生き残る道はまだまだあるはず。
こうしたタイミングで、JR東日本と東急電鉄がJR北海道の観光列車の運転に協力するといったニュースが入り、さらにはキハ261系特急気動車やキハ40形の観光列車仕様を導入するといったニュースが入るなど、将来を見据えた動きも報じられている。特に、東急電鉄が伊豆を走る豪華列車「Royal Express」を北海道で運転するなどというニュースは、北海道の発展に貢献してきた東急グループの恩返しのような話であり、その意義深さは感じ入るところ。
ローカル線がローカル線でなくなるには、①〜④の要素を獲得するより他はない。そのどれも満たせないとあっては、もはやその鉄道は社会から必要とされなくなっていると言ってよい。何が何でも鉄道を維持していかなくてはならない、ということはない。
しかし、今ある鉄道路線というものは、地域にとっては貴重なインフラであることに変わりはない。当たり前のようにそこにあって、存在することを疑われない、水や空気のようなものなのだ。
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「“新千歳空港本線直結”でJR北海道は変わるか」