終点・平野と平久保崎灯台
灯台への分岐点に着くと、声掛けはなかったが停車し、ドアが開いた。「平久保崎灯台へお越しの方は、こちらでお降りください。ライトハウス、ヒアー」
県道上に「←平久保崎灯台」との案内標識があり、この標識が事実上のバス停として機能しているようだった。すると、バスターミナルからずっと座っていた中国人観光客が恐々席を立ち、「・・・Kabira?」と運転手さんへ声をかけた。なんとこの一団、【9】川平リゾート線と誤乗したようだ。ここからではまた1時間半かけてバスターミナルに戻るか、伊原間でうまいこと一周線の川平方面行があるかどうか・・・。豪快な誤乗で、どうすれば軌道修正できるか、わかったものではなかった。
「ノーノー、カビラ イズ ノット ヒアー」と、運転手さんが必死に説明するも、「どうやら自分たちは川平行きではないバスに乗ってしまったらしい」ということを悟ったあたりで、しゅんとした顔で降りていった。折り返しは50分後となり、それまで灯台でも見物して時間をつぶすほかない。間違えたとはいえ、ここまでの間違いは気の毒になる。
12:50、平野着。バスターミナルからちょうど1時間半、40kmの道のりであった。灯台分岐点から750mほど。立派な待合施設が設けられており、その脇には小さな転回場もあった。
「この先200m 行き止まり」という大きな道路標識もあり、石垣島最北端ということを認識する。
自分ともう一人を降ろした【6】平野線・平野行きは小さな転回場に入り、時間調整。折り返しは50分後、13:35発のバスターミナル行き。
バス停から少し手前には「北のとうだい」という民宿(?)もあり、旅情を感じさせる名前であるが、その佇まいはかなりワイルド。平野で滞泊となる【5】平野伊原間線の乗務員宿泊所でもあるらしいが、ここに仕事で泊まるのか・・・と思ってしまうようなワイルドぶり。
灯台分岐点から平久保崎灯台までは徒歩15分ほどで、折り返し50分の間に小憩できるくらいではあるが、平野停留所からだと徒歩20分を要し、その小憩が短くなってしまう。岬の突端だけあって、灯台に向かってきつい上り坂が続き、荷物を持っていると少々きつい。
石垣牛の放牧場があるのか、与那国島で見かけた「テキサスゲート(偶蹄目の侵入を防止する溝)」を踏み越えていく。するとようやく眼前が開け、遮るものが何もない灯台の景色が、目の前に広がる。
平久保崎灯台は小柄なもので、上ったりはできない。それでも、灯台と岬に打ち寄せる波しぶきという荒々しい景色は、見る者を何か惹きつけるものがある。
南の島らしからぬ「北の灯台」。黄色いローカル路線バスで訪れるのも、また一興であることだろう。
(つづく)