九州・沖縄

【沖縄】石垣島:平久保崎・・・南の島の”北の灯台”へ──東バス【6】平野線 #77

空港からはフリー乗降区間

空港から先は、いよいよ1日数本のローカル区間。それと同時に、フリー乗降区間となる。

▲空港を過ぎると対向車もかなり少なくなる

バス車両の掲示は「白保終点↔伊原間↔平野/大嶽おおだけ西入口」がフリー乗降区間となっているが、これは新石垣空港開港前のものであり、現に「白保終点」という停留所は現存しない。それまで【4】(旧)白保線が折り返していた「白保終点」の転回場は、あずまタクシーの待機所に転用されている様子。空港まで4~5kmと比較的近いため、閉鎖されることなく有効に利用されているようだ。

▲「白保終点」の表記がまだ残る。現在は石垣空港からが正しい

ちなみに、空港開港前から【4】(旧)白保線はバスターミナル―白保終点間30分間隔のダイヤであり、これは石垣島のみならず沖縄全体でも高頻度運行の部類に属していた。この下地があったからこそ、現在の【4】【10】空港線の15分間隔運行が実現しているとも言えるだろう。

▲於茂登トンネルへの道が分岐。川平方面への短絡ルートになっている

石垣市街地から白保までは真栄里、大浜、宮良、白保といった市街地が連なっているが、白保を過ぎるとプツリと市街地は途切れ、サトウキビ畑がどこまでも広がる、典型的な沖縄の景色になる。それと共に停留所の間隔も長くなり(フリー乗降制ということもあるが)、1停留所の距離が5分程度にまで広がってくる。

あまり変わり映えの無い農地の中をひた走り、たまに現れる集落にバスポールがぽつんと立っているだけ・・・という景色を繰り返す。「大里おおざと」「星野」「野原のばれ」「大野」「徳山」といった、(読み方を除いて)沖縄由来ではなさそうな地名が続くと、いかにもこの地域が他地域からの移住・開拓によって開かれてきたであろうことがわかる。

▲停留所はあるがそれ以外の建物が見当たらない(徳山)

「伊野田校」「伊野田2班」「伊野田3班」という停留所名も、かなり独特。特に「伊野田校」は文字通り石垣市立伊野田小学校の前にあるが、なぜか「伊野田小学校前」ではなく「伊野田校」だし、続く停留所も「北伊野田」とかではなく「伊野田2班・3班」である。推測の域を出ないが、もとは独立した小学校でなくどこかの分校であったということなのか(『○○小学校伊野田校』のような校名?)、そして小学校周辺の集落から「2班」「3班」が独立していったということなのか。

▲バスベイが設けられている「伊野田三班」停留所。バスベイに入って後続車をやり過ごす。

いずれにせよ、分校の建設→衛星集落の成立→さらに衛星集落の成立・・・という、入植の過程が見られるような停留所の流れである。ちなみに、「バスマップ沖縄」では「伊野田小学校前」表記であるが、現地のバス停や東バス時刻表では「伊野田校」である。もっとも、この程度の表記揺れは、沖縄のバスでは珍しいことではない。

12:21、玉取崎着。【6】平野線随一の観光地、玉取崎展望台の最寄りである「玉取崎」停留所ではさすがに動きがあるかと思ったが、車内の動きは全くなし。全員平久保崎まで行くのだろうか。

▲玉取崎展望台への案内看板。石垣島東海岸の数少ない観光地である

石垣島北部の拠点となる伊原間集落を前に、石垣島一周道路が合流する。石垣市街地から続いてきた国道390号はここまでで、平野方面へは県道206号平野伊原間線、川平方面へは県道79号石垣港伊原間線となる。その合流地点近くの「舟越ふなくやー」停留所もかなり特徴的。読み方が「ふなくやー」という沖縄独特なものなのだが、英語放送では「The next stop is Funakoshi.」と、「ふなこし」読みなのである。「ふなくやー」では地元客にしか通じないため、両方の読み方を併存させているのだろう。

ちなみに、この「舟越」は平久保半島の幅が最も狭まる地点にあり、最も狭い所で300mを切る。平久保半島を船で迂回すると約30kmもの遠回りとなるため、古来よりここで満潮時に船を引き上げ、干潮時に対岸へ降ろす「舟越え」が行われていたという。

12:24、伊原間着。バス停の周囲には郵便局や診療所、小さな商店があり、小さいながらも生活拠点となっている様子が窺える。

【6】平野線・平野行きにも久しぶりに1名乗車があり、その男性は「久宇良くうらまで」という。1分停車でさっさと出発。朝は活気ある接続風景が見られることだろう。ちなみに、バス停のやや北側には八重山そばの名店「新垣食堂」がある。伊原間までは【6】平野線だけでなく一周線などの他路線も使えるので、うまく時間を調整すればバスでの訪問も可能だろう。

▲伊原間に到着。転回場は右側に広がる

外周道路は伊原間で川平方面へ逸れていき、ここから先は平久保半島を貫く一本道になる。平久保半島を形成する山が険しいため、山を左右に避けていくルートを辿ることから、半島の外周を辿る道路は存在しない。文字通りの行き止まり一本道なのだ。

伊原間から平野までは約14kmあるが、中間停留所は明石あかいし久宇良くうら、吉野、平久保の4つしかない。平均3kmほど集落の距離が開いていることになり、それほどまでに人が減ってくる。

12:32、明石着。県道206号からやや集落が離れているため、300mほど県道から逸れて集落内へ寄り道していく。

▲明石手前。集落へは右折した先になる

ここも八重山そばの超有名店・明石食堂の最寄りであるが、伊原間と違って本数が1日3~5往復に激減しており、この本数ではバス訪問はなかなか難しい。1停留所とはいえ、伊原間から4.5kmも離れているため、片道バスに乗って帰りは歩くというのも現実的ではない。実はこの後明石食堂を訪れることができたのだが、どうやったのかは次回ご紹介しよう。

▲明石で転回する平野線

12:39、久宇良着。ここも県道からやや離れているため、県道から逸れて集落へ寄り道。伊原間から乗った男性が降りていった。

▲今にも緑に飲み込まれそうな久宇良停留所。「クーラ」とカタカナが振られている資料もある

もと来た道をUターンするのかと思ったら、なんと石垣牛の牧場の傍ら、未舗装道をガタガタと最徐行で進んでいくではないか。

沖縄広しと言えど、ノンステップの路線バスが未舗装道を走るところなど、ここくらいなのではないだろうか。未舗装道の区間は200mほどだが、県道に戻る最短経路でもないため、何のためにこの未舗装道を経由するのかは定かでない。

▲牧場の脇の未舗装道を走っていく

県道上の吉野、平久保停留所を通過。平久保停留所のアナウンスでは、「平久保崎灯台へお越しの方は、運転手にお声がけください」と案内があった。平久保の集落にある停留所から灯台までは3kmほど離れているため、誤降車防止のためだ。灯台への道の分岐点に停留所はないが、石垣空港から先はすべてフリー乗降制のため、分岐点で降りることは当然できる。ただ、停留所でもないところで停車することに変わりはないため、事前の声掛けを求めているものと思う。しかし、自分は平野まで乗り通す予定であったから黙っていたものの、声掛けをする乗客はいなかった。

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終点・平野と平久保崎灯台

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