九州・沖縄

【沖縄】どちらに乗る?石垣空港から離島ターミナルへ──東バス④⑩空港線 #68

石垣の幹線:東バス④⑩空港線

2019年4月27日(土)、NH89便:ANA羽田発石垣行きは、定刻通り9:30に石垣空港へランディング。

▲2013年に開港したばかりのターミナルビル。「おーりとーり八重山へ」の横断幕は格好のフォトスポットになっている

おーりとーりようこそ八重山へ」の横断幕を目にすると、初めて八重山の地に降り立ったという感慨もひとしおであるが、この先も空港・離島ターミナルと2度の乗り継ぎを済ませなければならず、安閑としてはいられない。感慨もそこそこにターミナルビルを出て左手の、路線バス乗り場へまっすぐ向かう。

乗り場は3つあり、手前から1・2番乗り場が東バス、3番乗り場がカリー観光となっている。東バスの④⑩石垣港離島ターミナル経由バスターミナル行きは、最も手前の1番乗り場から出発するため、老舗らしく有利な位置を占めている。石垣空港発8:15〜21:00まで時刻表は統一されており、00(④:平得ひらえ・大浜・白保しらほ経由)・15(⑩:アートホテル・ANAインターコンチネンタルホテル経由)・30(④)・45(⑩)をひたすら繰り返す、極めて明快でわかりやすい設定である。

▲東バスが発着する1・2番のりば。屋根があるのみで簡素

2番乗り場は市街地と反対方向のバスが発着するが、その内訳は北東部の伊原間いばるま・平野方面行きが4本/日、北西部の川平かびら方面行きが3本/日に限られる。15分間隔で頻発する1番乗り場とは打って変わって、本数が極めて少ない。石垣島の人口は④⑩系統沿いに集中しているため、このラインから外れる地域を走るバスは、東バスといえどローカル路線バス同然である。これら空港に立ち寄るローカル系統は、幹線としての役割を担う④⑩とは塗装も異なり、明確に区分されている。

その奥、3番乗り場はカリー観光の乗り場となっており、バスポールにデカデカと「港直行」と赤い字の看板を掲げ、離島ターミナルまでノンストップの利便性をアピールしている。脇には「片道500円」「離島ターミナル行き特急(30分)バス乗り場」といったフレーズも掲げられ、東バスに対するPRに余念がない。こちらも9:10の始発〜19:10発の最終まで、10・40分発のきっかり30分間隔運転と、極めてわかりやすいダイヤとなっている。ただ、9:30ランディングのANA89便の乗客を拾うには、9:40発のカリー観光では慌ただしすぎ、9:40発はほぼカラで出発していった。

東バス1番乗り場前には東バスのアンマーお母さん…もとい係員さんが待機しており、エアポート往復きっぷやフリーパス類の発売、および目的地に応じた降車停留所の案内にあたっている。

「空港往復チケットをお願いします。あと、フェリーの割引券もお願いします」

「はぁ〜い、わかりました。1,000円です。お客さん、私が言う前に『フェリーの割引券も』だなんて、さては八重山ツウだね」

初めての観光客にも、まるで商店街の常連客かのようなフレンドリーっぷり。この開放感は、やはりぱいぬ島ならでは。

「いえ、初めて来たんですよ」

「あらま、それじゃあ、相当調べてきたんだね。それなら分かってるとは思うけど、この券は安栄観光の窓口じゃないと使えないからね。離島ターミナルに入って右が安栄の窓口だから、すぐわかると思いますよ。八重山観光フェリーに乗るときも、安栄で引き換えてから乗ってくださいねー」

事情を知らなければ「安栄観光」だの「八重山観光フェリー」だの、船会社の名前が立て続けに出てきて面食らうが、これは2社が波照間はてるま航路を除いて共同運航の体制を採っているため。乗船券は相互利用できるため、安栄観光の乗船券で八重山観光フェリーにも乗船できるし、その逆も然りである。ただ、完全な共同運航というわけでもなく、この東バスの割引券のように、どちらか一方でしか使えない・有効にならなかったりする点もある。この場合、割引を受けた上で八重山観光フェリー便に乗るには、たとえ先発のフェリーが八重山観光フェリーであっても、安栄観光の窓口で乗船券を買わなければならないということになる。このややこしい点については、フェリーに乗る時点で説明しよう。

僕が乗る9:45発の東バス⑩の方には地元客を中心に10名程度が乗り込み、ほどほどの乗り具合。そうこうしているうち、定刻になった。

「お客さん、乗ります?港行きますか?…だめだ、返事くれないや。まあいいか、それじゃ乗務員さん、出発してください」

バスにふらふらと近づいてくる外国人観光客の姿があったが、係員のおばさんが声をかけたら離れてしまった。このバスに乗るつもりはないようだ。アンマー、残念そう。

「はいよ。それでは9:45発、10系統、ANAインターコンチネンタルホテル・離島ターミナル経由、バスターミナル行き、発車します。サンエー・かねひでには行きませんので、ご注意ください。バスターミナルまでの所要時間はおよそ40分、10:25の到着予定です」

なんとなくのんびりした調子の案内であった。しかしながら、④の主要停留所であるサンエー前・かねひで前には立ち寄らないこと、終点までの所要時間を案内していることなど、丁寧な案内が心がけられているのには好感を抱いた。

石垣空港は「新石垣空港」と呼ばれることも多いが、これは石垣市街地にほど近い石垣市真栄里まえざとから、現在の白保しらほへと2013年に移転したばかりという経緯による。それまでの(旧)石垣空港は石垣市街地から約3.5kmとアクセスは良かったものの、旧海軍飛行場を流用したという経緯から滑走路が1,500mしかなく、燃料搭載量の関係で東京・大阪への直行便が就航できない上に、空港周辺の市街化が進んで騒音問題が看過できなくなるなど、多くの問題を抱えていた。現空港は石垣市街地から15kmと離れはしたが、国際線を含む多くの新規路線の就航に成功し八重山観光の起爆剤となり、観光入れ込み数は年々増加している。現在の八重山観光の上がり調子は、新空港なしには語れないものである。

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「白保・宮良・真栄里・・・集落を縫って」

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