九州・沖縄

【沖縄】総論・沖縄のバス(2) 沖縄県庁のバス再編案解説とS駅私案 #11

モノレールが出てこない県のプラン

ところが、県のプランではモノレールへの言及が殆どない。当事者へのヒアリングの中で沖縄都市モノレール株式会社が登場するだけ、かつモノレールを含んだ再編案の言及もないので、県のプランではあくまでバス単体の改善を考えているということだろう。何しろ、広報活動の主体を担う組織が「バス党」と名乗っているくらいなのだから。

自分としてはモノレールも含んだ再編が不可欠だと思う。沖縄のバスが抱える「複雑な路線」と「定時性の喪失」という2つの問題のうち、県のプランは「複雑な路線の単純化」が議論の主眼となっているように感じる。しかし、路線を単純化したところで、そして急行バスを設定したところで定時性が向上するわけではない。一般道を走行する以上交通信号には従わなければならないし、バス専用レーンといっても路上駐車や自転車・歩行者といった撹乱要因から解放されるわけではない。要は、バスは鉄道のような始終バス専用の走行空間を確保できるわけではないのだ。

そして、最も撹乱要因が多い那覇市内において、専用の走行空間を有しているのがモノレールである以上、バスの短所を補う存在として連携しない手はないと思う。おもろまち駅や赤嶺駅にはバスモノ連携を見据えたバスターミナルが用意されていることからも、こうした考えがないわけではないことの現れだ。混雑する那覇市内は定時性に優れるモノレール、郊外であればある程度定時性を担保できるバスとで連携すればよいというのは、ごく自然な考えのはず。

ここからは推論の域を出ないが、モノレールが那覇市内でほぼ完結していることが、県のプランにモノレールが出てこない原因ではないだろうか。

無理からぬ話ではあるが、那覇市内においては那覇空港〜国際通り〜首里城という都市軸を結ぶモビリティとしてモノレールが確立した存在であり、バスはモノレールの恩恵が及ばない場所をカバーする補助的なモビリティでしかない。要は、那覇市全体の政策課題として、バスの問題はそれほど大きな問題ではない。しかしながら、那覇近郊の浦添市、宜野湾市、沖縄市などにおいて、バスは那覇市街への重要な足であり、従って政策課題としても大きな問題になる。ところが、複雑かつ定時性を損なう大きな要因である那覇市内の問題に対して、当の那覇市がそれほど大きな問題として対処しないために、手をつけやすく、自治体の協力を得やすい、宇地泊・伊佐・普天間(宜野湾市)および胡屋〜コザ(沖縄市)の交通結節点整備を主軸として動くことになった…というのが、モノレールが出てこない原因だろう。

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沖縄都市モノレール株式会社の持株比率。株式の99%を上位5位の公的機関が保有するが、沿線自治体の那覇市と浦添市を足すと、沖縄県より僅かに低い35%の値になる。那覇市と浦添市が首を縦に振らない話は県としても動かせないだろう(出典:平成29年度沖縄県公社等の概要調書の公表) 

平成29年度公社等の概要調書の公表/沖縄県

沖縄都市モノレール株式会社の持株比率。株式の99%を上位5位の公的機関が保有するが、沿線自治体の那覇市と浦添市を足すと、沖縄県より僅かに低い35%の値になる。那覇市と浦添市が首を縦に振らない話は県としても動かせないだろう(出典:平成29年度沖縄県公社等の概要調書の公表)

f:id:stationoffice:20180511191029j:image国際通り経由は便利だけども、多過ぎる上に渋滞するために時間がかかりすぎる

以上の点を踏まえ、私案を述べたいと思う。

(次ページ)
「バスモノ乗り継ぎを含めた制度設計を」

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