九州・沖縄

【沖縄】旅の終わり:那覇のうまいもの ちゃんぽん、かつどん、ステーキ、スパム…#12

沖縄グルメの定番といえばゴーヤーチャンプルー沖縄そば。しかしながら、自分でも沖縄を訪れるまで知らなかったものが沢山。それをご紹介すると共に、沖縄編のラストとして、島を走るバス達にエールを。

目次

・沖縄式「ちゃんぽん」は麺にあらず

那覇に着いて、まず訪れたのが松山の「みかど」。ゆいレール県庁前駅を降り、パレットくもじや国際通りへ向かう人の波とは反対の久茂地方向へ向かう。

久茂地川を渡ると赤瓦やシーサーといった沖縄らしいものは悉く姿を消し、国道58号沿いに石張りのオフィスビルが建ち並ぶ、ビジネスライクな街並みになる。幅の広い国道をオフィスビルが取り囲むといった景色は、なんだか仙台の国道4号・東二番丁通りや、富山の城址大通りあたりの景色を彷彿とさせる。東二番丁も城址大通りも久茂地も中央の支店が軒を連ねるのは同じなので、似たような景色になるのだろう。日曜日の昼間とあって、いかにもな沖縄らしい景色が広がる国際通りの喧騒とは無縁。歩くこと5分、久茂地のオフィス街の一角に「みかど」はあった。

f:id:stationoffice:20180514191109j:imageオフィス街の一角で派手な看板が目立つ

黄色い看板に赤い文字というビビッドな色使いの看板に誘われて店に入ると、縦書きの札に書かれたメニューがズラリ。「とーふちゃんぷるー」「からしな炒め」と、平仮名ばかりなのはなぜだろう。カウンター席と厨房の間に、紅型(びんがた)の暖簾が揺れているのが沖縄らしい。

f:id:stationoffice:20180514191124j:image紅型の暖簾が揺れる店内

厨房には3人のアンマー(お母さん)が立ち、給仕や会計は1人のアンマーが全てこなす。都合4人で全部回しているわけで、沖縄のアンマーはよく働くというのは本当だなあと実感。年中無休で8:00~24:00という営業時間の長さにも驚くが、以前は24時間営業をしていたそう。16時過ぎという中途半端な時間に入ったにも関わらず、あたたかなごはんをいつでも食べられるというのは実にありがたい。実際、この日も軽装の先客が2名いて、遅お昼か早夕飯を食べていた。オフィス街の真ん中で年中無休の長時間営業というのは、終電車に惑わされないのが前提の沖縄社会の在り方ならではのスタイルなのだと思う。

「ここの名物は、なんといっても『ちゃんぽん』です」とO君。確かに、厨房の上に並ぶメニューにも「人気No,1」とある。長崎ちゃんぽんにしても、姫路のちゃんぽん焼き(うどんと中華麺を混ぜ合わせて鉄板で焼きそば状にしたもの)にしても、駅そばのちゃんぽん(日本そばとうどんが同じ丼に入っている)にしても、麺類というのは同じなので、沖縄のちゃんぽんというのも、大方沖縄そばと中華麺か何かを混ぜたものだろうと思っていた。自分はちゃんぽん、O君は沖縄そばを注文して待つこと数分、運ばれてきたのはつやつやのごはんもの。大いに予想を裏切られた。

f:id:stationoffice:20180514191209j:imageこれぞ沖縄式「野菜た●ぷりちゃんぽん」 650円という値段も魅力

f:id:stationoffice:20180514191316j:imageO君注文、オーソドックスな沖縄そば。550円

ポーク(ランチョンミート)をくずし入れた野菜炒めを卵でとじ、平皿に盛ったごはんに乗せたものが沖縄のちゃんぽん。キャベツにニンジンにタマネギといった定番の野菜ばかりでなく、沖縄らしく肉厚のからし菜が入っているあたりはいかにも沖縄。うん、うまい。これはごはんが進む。

「沖縄のかつ丼は、この野菜炒めが乗っているんですよ」とO君。16時過ぎまで何も食べていなかったこともあり、かつ丼を追加で注文することに。数分後、出てきた「かつどん」は、確かに野菜たっぷり。

f:id:stationoffice:20180514191243j:imageこれぞ沖縄式ヘルシー”かつどん” これだけ野菜が入って750円

野菜炒めの内容は変わらないながら(ポーク抜き)、細かめのパン粉の衣で、肉は薄め。しかしながら、これは薄切り肉の方が野菜炒めとの相性がいいと感じた。「沖縄のかつ丼は野菜たっぷりでヘルシーさぁー」と、店内に飾ってあった雑誌の切り抜きがどこか誇らしげだ。

ちゃんぽんに沖縄そばにかつどんに、メシのうまさと働くアンマーの姿が印象的な「みかど」でした。那覇を訪れる際は、是非オススメしたい。

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バス…久茂地経由(急行停車)「農林中金前」より徒歩1分、ゆいレール「県庁前」駅より徒歩5分

・沖縄人のパワーの源!アメリカ流「ジャッキーステーキハウス

沖縄滞在も最後の夜。何を食べようかという段になり、やはりもう一つの沖縄らしさである、アメリケンなステーキを食べようじゃないかという流れになった。

仙台市の牛タン焼きも米軍がもたらした大量のビーフ(の端肉)を源流に持つとされるが、沖縄のステーキは単純明快、まさに米軍がもたらした食文化そのもの。戦後、本土よりも安い牛肉を大量に仕入れられる環境に合った沖縄では、米軍相手の飲食店が数多く誕生した。いまや沖縄名物となったタコライス(タコスの具を白飯に乗せたもの)も、北部・金武町(きん―)のキャンプ・ハンセン前に開店した「パーラー千里」が元祖と言われる。タコライスのようにアメリカ文化と沖縄文化が融合したものもあれば、A&Wに代表されるハンバーガーなど、アメリカ文化そのもののものも多い。

そういった意味では、沖縄のステーキはアメリカ文化を色濃く残すカテゴリのものだ。仙台市の牛タン焼きのような独自の発展を遂げたものではないため、ちゃんぷるーや沖縄そばのように「沖縄名物」として認識されることはあまりないが、それでも街中に点々とステーキ店が並ぶ様子を見ると、ステーキがいかに沖縄の食生活に根付いているかがわかろうかというもの。

ステーキ店が歓楽街に多く立地するのも沖縄の特徴であり、これは本土より安いと言っても日常の食事としては高いものであるため、「呑みの後の締めにステーキ」であるとか、「事前にステーキを食べて精をつけておこう」といったように、非日常を演出するためのアイテムとして認識されているためではないかと思う。今回訪れた「ジャッキーステーキハウス」も、今ではうらぶれた街並みの中にあるが、かつては那覇で一番の繁華街であった東町の真ん中で、旧沖縄県営鉄道那覇駅と、栄華を極めた辻(ちーじ)遊郭を結ぶ途中にあたる。そのせいか、店の周囲は今でも妖しい雰囲気が漂っている。

ゆいレール旭橋駅から海側に進んでいくと、かつての繁華街の面影を残す、狭い敷地に小さなビルやアパートが立て込んだエリアに入っていく。奥へ進むと、街灯の明かりも乏しくなっていく。そんな中に、「ジャッキーステーキハウス」と書かれた赤いネオンがギラギラと光っていた。まるでステーキがもたらすエネルギー感を象徴しているかのようだ。

f:id:stationoffice:20180514195523j:image赤い蛍光管のネオンが闇に浮かぶ

f:id:stationoffice:20180514195635j:image混雑状況を示す信号機と、洒落の効いたポスターが笑いを誘う

夕食のピークを若干外した日曜の20時頃に入ったが、店内は客でごった返していた。名簿に名前を書くと、店員さんの予想によれば90分待ちだという。折角の那覇の夜を90分も潰すのはもったいないので、名前だけ書いて近くのスーパー「かねひで」を訪ねることにした。その様子は後ほど記す。

90分後に店へ行くと、ピッタリのタイミングで席へ通された。さすがは店員さんの経験と勘である。さっそく一番人気の「テンダーロインステーキ」を注文。250gが最大で、これ以上のカットは注文できないあたり、1ポンドステーキのようなボリュームで勝負するのではなく、ステーキの味そのもので勝負!といった心意気が見える。

メニューを見ると、様々なステーキやハンバーグが並んでいるのはもちろん、「スキヤキ」「ヤキソバ」「フライライス」「ミソ汁」といったステーキ店らしからぬサイドメニューが目を引く。ふと見ると、隣の家族連れが「スキヤキ」を頼んでいた。いったいどんなメニューが出てくるんだと思えば、文字通りのスキヤキが深鉢によそわれたものが運ばれてきた。それを取り分け、味噌汁代わりにおいしそうに頬張る顔がうらやましい。ステーキをカットする際に出た端肉を活用したメニューであろうが、なるほど西洋風のステーキソースと、しょうゆベースのスキヤキたれを交互に食べれば、飽きも来ない。

f:id:stationoffice:20180514195708j:image素朴な店内に芸能人のサインがずらり

f:id:stationoffice:20180514195728j:imageこれまた素朴なメニュー。ステーキ店らしからぬサイドメニューが気になる

隣のスキヤキをうまそうに眺めていたら、鉄板の上で肉が焼ける音と共に、テンダーロインステーキがやってきた。

f:id:stationoffice:20180514195802j:image

ジューーーーー。

白い!そして赤い!なんとおめでたい紅白のステーキだろう!

厚からず薄からずな白い淡白なステーキに、酸味の強い「ドリームNo,1ステーキソース」をかけて頂くのがジャッキー流。最初は酸味がきつく感じられるが、肉そのものの味をうまく引き出してくれる。酸味が強いだけに、最後までしつこくなく、さっぱりと食べられる。肉を焼き始めて表面の色が変わったくらいで鉄板に上げるこの焼き方は、ただのレアやミディアムレアというわけでもない。なかなか真似できない焼き方だ。

食べたころには22時を過ぎていたが、それでも店内にはステーキを求める客が列を成していた。この情熱的なエネルギーは、ステーキを食べる前からもはや胃袋から湧き上がっているかのよう。一見客はサイドメニューを頼むことなくステーキ一本で済ませているようだが、通いなれた常連客は先ほどのスキヤキを頼んだり、タコスを頼んだりと、味に変化を持たせている。250g以上のステーキを注文できないといったこともあるだろう。

f:id:stationoffice:20180514195822j:image22時を過ぎても行列は引きも切らない

ステーキのみならず、様々な沖縄鉄板グルメを味わえる「ジャッキーステーキハウス」。クラシックな沖縄ステーキを味わうには、うってつけの店だろう。

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・スーパー「かねひで」に見る「スパム」「チューリップ」

ジャッキーステーキハウスを待っている間、沖縄県民の日常の食生活に触れるべく、スーパーに出かけた。鮮魚、精肉、総菜コーナーを俯瞰すると、その地域の人々の普段の生活が見える。それが面白くて、旅先のスーパーに立ち寄るのが習慣になっている。旅先での貴重な90分を無駄にするわけにはいかなかった。

旭橋駅に戻り、ゆいレールに乗る。一つ那覇空港寄りの壺川駅で降り、徒歩5分ほどの「タウンプラザかねひで 壺川店」へ向かった。壺川店を名乗るが、カフーナ旭橋の再開発地区からも3~5分程度で、旭橋駅からも徒歩10分程度。この立地で平屋且つ平面駐車場であり、恐らく中心市街地に最も近い郊外型スーパーであろう。

かねひでは県内60店舗を展開する県内第2位のスーパー。ちなみに、第1位はサンエー(66店舗)、第3位はユニオン(18店舗)と続いている。ジャッキーステーキハウスの近くには「西町りうぼう」があり、その名の通り久茂地のリウボウ百貨店の支店という位置づけで、高級品にも力を入れている。初めての那覇とあれば、より庶民的な位置づけの「かねひで」に行っておきたかった。閉店は午前1時と、ここでも終電車の文化がない那覇の生活スタイルが透けて見える。

f:id:stationoffice:20180517232355j:image閉店は何と深夜1時。沖縄のスーパーでは24時間営業も珍しくない

沖縄のスーパーで眼を見張るのは、やはりポークランチョンミートの安さと品揃えの豊富さだ。「スパム(アメリカ)」と「チューリップ(デンマーク)」の二大メーカーに加え、「ミッドランド」「セレブレティ」という聞き慣れないメーカーのものまである。東京だとそもそも陳列されていないこともあるし、されていても1缶500円以上することも珍しくなく、「輸入食品」にカテゴライズされることも多い。しかし、沖縄では日常食として広く県民の生活に馴染んでいるため、スパム・チューリップとも200円前後で買い求めることができる。ミッドランド、セレブレティといった聞き慣れないメーカーだとさらに1〜2割安い。1〜2kgはある業務用の缶から使い切りサイズまで色々。100円台でまとまったサイズの肉類を常備できるのだから、そりゃ沖縄県民の生活に深く溶け込むだろう。

沖縄にはポークランチョンミートの輸入代理店や日本の拠点があり、アメリカやヨーロッパから日本へ輸入されてくるポークランチョンミートは、まず沖縄に入ってくる。東京をはじめ本土の各地で売られるポークランチョンミートは沖縄から「輸入」されたものなので、いわば価格に「離島料金」が上乗せされていることになる。本土にいると通販の離島料金に触れる機会などあまりないが、ポークランチョンミートはそれを教えてくれる好材料なのかもしれない。

f:id:stationoffice:20180517230408j:image左からミッドランド(デンマーク)、セレブレティ(デンマーク)、スパム(アメリカ)。スパム以外は本土ではあまり見かけない

・島バスたちへ送るエール

以上、全12回にわたり、沖縄の「島バス」たちを中心として、思ったこと考えたことをつらつらと書き続けてきた。このブログのタイトル「駅事務室」という言葉に象徴されるように、もともとは鉄道の旅を愛する自分が、鉄道で各地を旅したことを書き溜めていくつもりであったが、なんだか現時点では沖縄のバスブログのようになってしまっているのは、ひとえに沖縄のせいだ(笑)

自分にとって沖縄とは、他の本土のどこにもない「バスが主役」という、独自の進化を遂げた交通網がある、実に魅惑的な場所になった。自分なりに沖縄を路線バスで旅するなかで、もっと改善できると思う部分はたくさんあったし、第10・11回で、一応は自分なりの提案の形に仕上げられたと思っている。

日本は長く大量輸送機関たる鉄道が交通の主役だったおかげで、バスや路面電車といった中量輸送機関に関しては発展が遅れていると言わざるを得ない。欧州では広く一般的に走っているLRT(Light Rail Transit)はようやく富山で第1号が走り始め、宇都宮や岡山がそれに続くかといったところだし、都市型BRT(Bus Rapid Transit)に関しては、いまだ本格的なものが現れたとは言い難い。名古屋ガイドウェイバスや、名古屋市営バス新出来町線あたりが最も都市型BRTに近い存在だとは思うが、名古屋の市街交通の主役はあくまで地下鉄であり、バスは補完的な存在でしかない。

しかし、鉄軌道が那覇周辺の一部でしか走らない沖縄にあっては、まさに日本の中量輸送機関の先進地となるポテンシャルを持っていると思う。那覇市は今後も人口増加が見込まれる、数少ない地方都市圏なのであり、したがってゆいレール以外の交通の重要性は増していく。そのような需要には恵まれたマーケットでありながら、沖縄県も認識しているように、公共交通機関の輸送分担率は全国最低クラス。十分な交通インフラに対する投資がなされているとは言えない。

今まで十分なインフラ投資がされてこなかったことの裏返しではあるが、那覇バスターミナルのリニューアルオープン、ゆいレールのてだこ浦西延長、バス結節のための交通結節点整備と、沖縄本島各地で大きなエポックが目白押しだ。そしてその今であるからこそ、ゾーン運賃制の導入やバスモノ乗り継ぎシステムの整備を通し、沖縄は日本の中量輸送機関をリードする全く新しい仕組みを構築するチャンスなのだ。

本格的な高齢社会の到来とは、今までよりもきめ細かな対応ができる中量輸送機関が見直されやすい。駅ひとつ造るにも大きな土地や手間を要する鉄道に比べ、バスやデマンドタクシーであれば停留所一本を置けば済む。そして、国内各地で全く同じ課題を背負うなかで、バスへの依存度が高い沖縄は、バスをはじめ中量輸送機関をリードする存在になれると思う。何しろ、「バス党」なる組織が県をあげて活動している地域など、沖縄以外ではまず聞かない。

f:id:stationoffice:20180517235248j:imagef:id:stationoffice:20180517235300j:imageまたんめんそーれ

今後も、機会を見つけて沖縄を訪れ、沖縄のバスやモノレールについての動向を注意深く観察していきたいと思っている。学生時代にあまり触れてこなかったからこそ、これからの自分にとって何か大きな材料をもたらしてくれる、そんな予感がするからだ。

もっと便利になるために、まさに生まれ変わらんとしている「島バス」達に、東京からエールを送ろう。

(沖縄編・完)