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【福岡】残された11.0kmの鉄路が向かう先 – 西鉄貝塚線(2) #31

西鉄新宮駅に佇む車止め。この先へと続き、福岡のベッドタウンを走っていたはずの電車は、本当に廃線にならなければならなかったのだろうか。よそ者の自分には、よくわからない。

西鉄新宮駅の車止めかつて津屋崎へと続いていた線路

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地下鉄/JRとの連携に徹する西鉄貝塚線

大混雑の鹿児島本線快速門司港行きを千早で降り、高架下で隣接する西鉄千早駅へ向かう。両者の改札口は隣同士で、全く雨に濡れることなく乗り換えができる。慣れていれば2分もあれば乗り換えられる近さだろう。同じように、快速門司港行きから降りた人が西鉄千早の改札口を通っていく流れもある。快速門司港行きからは30人ほどが西鉄へ向かっただろうか。

西鉄千早駅のホームエスカレーター完備の高架駅。地下鉄直通用のホーム延伸準備もある
西鉄千早駅の駅名標JRと同一駅だが「西鉄」がつく
上り貝塚行き上り貝塚行きが到着。20人ほどが乗った

JR→西鉄への流れがそこそこあったので、下り新宮方面への帰宅の流れの方が強いかと思ったが、意外と貝塚行きへの流れもあり、ほぼ拮抗していた。千早から貝塚へは僅か2駅で終点なので、貝塚行きに乗った乗客はほぼ地下鉄箱崎線への乗り継ぎ利用と見ていいだろう。地下鉄は6両編成・7〜8分間隔、西鉄は2両編成・15分間隔と輸送力にだいぶ開きがあるが、地下鉄・西鉄は一体的な利用がなされていることがよくわかる。

考えてみれば、JRも平均10分間隔程度での運行であり、15分程度運転間隔が開くこともざらにある。そうした状況であれば、JRと西鉄の本数の差はさほどでもなく、天神方面へは西鉄、博多駅方面へはJRと使い分けがなされている状況と言えよう。

下り西鉄新宮行き下り西鉄新宮行きが到着。上り貝塚行きはすぐに扉を閉めて出発
下り西鉄新宮行き下り西鉄新宮行きの降車は少ない。JRからの乗換客を乗せて出発

下り西鉄新宮行きが到着しても降車はさほどでもなく、乗車が殆ど。ドア付近に立客がそこそこいるという状況で、西鉄千早を出発。夕ラッシュでもデータイムと同じ15分間隔なので、JRの快速ほどではないにせよ、なかなか混雑している。乗車率は100%を超えている。

高架駅ながら単式1面1線の香椎宮前(かしいみやまえ)はさほど乗降なし。「香椎宮前、宮前です」という略し方が独特だ。

香椎宮前駅単式1面1線の高架駅となった香椎宮前

駅名にもある香椎宮はここから徒歩10分だが、香椎宮自体はJR香椎線・香椎神宮駅の方が徒歩3分と近い(『香椎神宮』は本来であれば誤記らしいが)。香椎宮前駅近くの国道3号にも「香椎参道口」交差点があり、香椎宮前駅もこの香椎参道に面している。古くからの参拝路だったことが窺える。駅間距離も短く、手前の西鉄千早からは0.5km、次の西鉄香椎へは0.6kmしかない。香椎宮前駅の開業は1959年と、開通から25年も経った後で、香椎宮参拝の便を図って開設されたものであろう。開業当初の蒸気機関車列車と違い、この時代には発進・停止が容易な電車になっていたことも、この短距離に駅が追加された要因であろうと思う。

次の西鉄香椎は千早と違い、JRとは少し離れているため乗り換えにはあまり適さないが、それでも千早と同じくらいの乗降がある。古くからの東区の中心地であり、乗降客自体が多いのだろう。

西鉄香椎駅マンションに囲まれた西鉄香椎。地下鉄直通に備えホーム延伸のスペースが確保されている

西鉄香椎でも上り貝塚行きと交換。西鉄千早〜西鉄香椎は高架化されており、地下鉄の乗り入れに対応した構造になっているが、西鉄香椎を出ると昔ながらの地平の線路になる。

西鉄香椎の先西鉄香椎の先で地平に降りる。西鉄香椎まではマンションが多い

次の香椎花園前(かしいかえんまえ)はその名の通り、西鉄グループが運営する「かしいかえん」の目の前にあり、小さな遊園地が駅前に広がっている。しかし夕方とあっては遊園地で遊ぶ子供の姿はなく、むしろ駅近くにある福岡県立香住丘高校の下校の生徒がホームを埋めていた。

香椎花園前駅高校生が多く待つ香椎花園前。かつての2番線ホームは撤去された
残された線路輝きを失った線路が姿を留める

線路は2本あるが、2番線は西鉄新宮〜津屋崎間部分廃止・減便の際に使用停止となっており、ホームこそ撤去されたものの、錆びついた線路が残っているのが痛々しい。ホームを埋める高校生たちが発するエネルギッシュな空気から、2番線だけがぽっかりと取り残されてしまっている。せめて何とか有効利用できないものだろうか。

香椎花園前の次は唐の原(とうのはる)。ここでも上り貝塚行きと交換。この辺りまで来ると天神から30分ほどとなり、駅前でも中低層のマンションか戸建が中心の街並みになってくる。貝塚、千早から乗った帰宅客もだんだんと減ってきて、車内には余裕がでてきた。

唐の原駅全線単線ながら2駅毎に交換列車があるため密度はかなり高い
唐の原駅周辺中低層マンションや団地に囲まれた唐の原
唐の原〜和白唐の原〜和白で香椎線のキハ47とすれ違った

唐の原を出るとJR香椎線と並んで走るようになり、しばらく並走したところで次の和白。かつて同じ会社の路線であったJR香椎線と接続する。しかし貝塚線が15分間隔なのに対し、香椎線は20〜30分間隔と運転間隔が揃っておらず、特に接続が図られているわけではない。

和白駅周辺マンションに囲まれた和白。左に香椎線のキハ47が見えている

もっとも、和白での接続が有効に機能し得るのは香椎線西戸崎方面←→貝塚線貝塚(天神)方面くらいで、そもそもの需要がそれほどない。それに、その区間はすべて西鉄バスが並行しており、わざわざJR・西鉄・地下鉄の3社の運賃を払う人も少ないだろう。ただ、和白の乗降客数は西鉄が約2,000人に対してJRは本数が少ないにもかかわらず3,000人いる。JRなら香椎で乗り換えれば、博多駅までJRの運賃のみで安く行けるが、天神方面なら西鉄バスだと乗り換えなし。天神方面へは時間に正確な貝塚線と、乗り換えなしの西鉄バスに分かれることが、貝塚線の乗降客数がJRよりも少ない要因であろう。

次の三苫は福岡市最北の駅で、かつての区間列車の折り返し駅。かつて2番線は折り返し列車専用ホームであったが、部分廃止時に上り列車用ホームに変更された。JRとも離れているので、多くの乗客がここで降りる。三苫で最後の行き違いをし、西鉄新宮まで最後の1駅間を走る。

三苫駅周辺中低層マンションに囲まれる三苫

貝塚から25分、天神からは乗り換え時間含め約40分で終点・西鉄新宮。ここまで残ったのは10人ほどであった。ただ、この1駅間のみ福岡市を外れるため、地下鉄箱崎線との乗り継ぎ割引が適用されない。そのため、例えば天神から三苫までだと470円なのに対し、西鉄新宮まで乗ると530円と、一気に60円も上がる。

西鉄新宮から先、かつて津屋崎へと続いていた線路敷は代替バスが発着するバスターミナルに代わり、その先は宅地開発された。駅に対してやけに新しい終端部のフェンスと、新しいバスターミナルの施設だけが、この駅が終点になってまだ日が浅いことを静かに物語っている。

西鉄新宮の駅名標部分廃止後の終点となった西鉄新宮。新宮町の離島「相島」は島民280人とネコ160匹が暮らす”ネコの島”として知られる
西鉄新宮駅のホーム
西鉄新宮駅のホーム終端部終端部。道路を跨いだ先はバスターミナル、更に先は宅地となった
発車を待つ折り返し貝塚行き
発車を待つ折り返し貝塚行き発車を待つ折り返し貝塚行き

(次ページ)
「代替バスと廃線区間のその後」

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