「道志みち」は通行止め!
三ケ木バスターミナルは旧津久井郡津久井町の中心部にあり、合併前は交通の中心地とされていた。神奈川中央交通西・津久井営業所を併設し、バスターミナル機能に車庫・営業所機能を併せ持った大規模な建物である。
三ケ木から出る路線の中で、最も本数が多いのは[橋01]橋本駅北口行きである。国道413号を直進し、橋本駅北口まで33分。日中でも12分間隔で運行があり、津久井営業所の中でも最大の幹線である。かつては京王相模原線が橋本から旧津久井町内の相模中野まで約10kmを延長する計画があったものの、1988年に計画は失効している。
さて、ここ三ケ木まではなんとか市街地区間と言えるものの、ここから先、相模原市緑区青野原、青根、月夜野方面へ向かうバスは1日6往復の過疎区間となる。うち4往復は14.9km先の東野で折り返しとなる[三55]であり、17.2kmの終点・月夜野へ向かう[三56]は僅かに2往復。主だった集落である青野原地区、青根地区は東野までの区間に収まっており、東野─月夜野の間にめぼしい集落はない。
つまり、東野─月夜野間はほぼ道志村への連絡のために存続しているようなものだ。土休日は三ケ木6:55発と15:30の2便が、両方とも富士急山梨バスの月夜野─道志線と接続を取る。(平日は2往復とも月夜野で数時間の待ち時間があり、接続しているとは言えない)
ふとバスポールを見ると、「バス運行状況について」という、淡々とした張り紙がしてあった。読んでみると、「台風24号の影響により、…運休区間が発生しております。…三56 三ケ木〜東野〜月夜野 系統 (夫婦園〜月夜野間 区間運休)」とある。
…ん?月夜野行きが区間運休…??
しかし、バスの行き先表示はちゃんと「月夜野行き」となっている。どういうことだ?…嫌な予感しかしないが、勇気を出して乗務員さんに尋ねてみた。
「あの、このバスは月夜野へは行かないんですか」
「あっ、そうなんです。台風の土砂崩れで国道が通れないので、月夜野までは行きません。途中の夫婦園で折り返しとなります」
なんということだ。訪問当時は、2018年10月1日の台風24号の影響により、国道413号「道志みち」の相模原市青根地区で大規模な土砂崩れがあり、細い迂回路のみが通じている状態だったのだ。一応、出発前に富士急側には電話で問い合わせ、本日の運行があることは確かめておいたのだが、神奈中側への問い合わせはしていなかった。三ケ木に着くまで運休を知ることが無かったのだ。なんたる不覚。
なお、本稿執筆時点(2019年1月)でも通行止めは続いており、[三55][三56]も平丸〜月夜野間4.9kmの区間運休が続いている。このため、青根地区住民および道志村民向けの代替タクシーが迂回路を経由してバス運行区間とを繋いでいるが、観光客の利用はできない。道路自体は2019年3月の暫定開通を目指し、治山工事を含めた復旧作業が続けられているが、バスの運行まで再開されるかどうかは不透明な情勢にある。
「そうですか…。月夜野で富士急バスに乗り継いで道志村へ行く予定だったんですが、このバスには乗らない方が良いですかね」
「道志村ですか!…そうですねえ、このバスに乗られても、夫婦園から先が土砂崩れで通行止めで、歩いていくのも当然危険ですから、道志村へ行かれるのであれば、このバスには乗らない方が良いです」
「どう回っていけばいいでしょうかね」
「大月から富士急の電車に乗って都留へ出てもらうか…申し訳ありません、詳しくなくて」
「わかりました、降ります。ご丁寧に、ありがとうございます」
さて、どうしようか。波乱のバス旅である。
(つづく)