九州・沖縄

【沖縄】フェリーに代わって伊良部島へ――共和バス【7】伊良部佐良浜平良線(1) #56

島と島を結ぶマイクロバス

伊良部大橋の開通を機により宮古島との経済的結びつきを強め、みやこ下地島空港の再旅客化にまで漕ぎつけた伊良部島。かつて平良港と、伊良部島の佐良浜さらはま港の間には高速船とカーフェリーが就航していたが、伊良部大橋の開通と引き換えに廃止された。そして、高速船・フェリーの跡を継いで、平良港と伊良部島を結んでいるのが、伊良部島内のバス事業者である「共和バス」である。

元々は伊良部島の玄関口であった佐良浜港から、伊良部町役場(現・宮古島市伊良部支所)がある長浜を経由し、島一番のビーチである「佐和田の浜」に近い「佐和田車庫」を終点とする路線であった。2015年に伊良部大橋が佐良浜港の南側に取り付けられたことで、開通と同時に、佐良浜港~伊良部大橋~平良港間を延伸。これにより、佐和田車庫―佐良浜港―平良港間が新しく【7】伊良部佐良浜平良線となり、平良港で宮古協栄バス・八千代バスとの結節が図られるようになった、現在はルート違い含め、1日8往復が運行されている。

▲共和バス【7】伊良部佐良浜平良線の路線図(『バスマップ沖縄』より)。佐和田車庫―佐良浜港の伊良部島内のみだった路線を平良港まで延伸した。佐良浜港から伊良部大橋までの間は集落がないため新設停留所はないが、宮古島内には独自の停留所が4つある。

 

さて、平良港14:30着の宮古協栄バス【4】与那覇嘉手苅線・平良行きから、平良港15:00発の共和バス【7】伊良部佐良浜平良線・佐和田車庫行きへ乗り換え。協栄バスは島の花でもあるブーゲンビレア色のノンステップバスであったが、待っていた共和バスは・・・なんと、旅館・ホテルの送迎車でよく見る、三菱ふそう・ローザのマイクロバスであった。人口6,600人を抱えるとはいえ、今や宮古島へクルマで簡単に渡れるとあっては、伊良部島の住民でもバスを使う人は多くないことがよくわかる。

発車まで20分以上あるが、ドアが開いていたので乗り込んでみると、乗務員さんが最後尾座席で寛いでいた。おっと、これは失敬。

「お客さん、観光?どちらまで?」

普段見ない顔だと思ったのだろう。或いは、よほど観光客の利用がないのかもしれない。宮古空港まで来るとかならまだしも、空港から3.5往復しかない宮古協栄バスで平良港まで来て、さらに共和バスへ乗り換えるといった物好きはいないだろう。あくまで、伊良部島の住民が平良へ出るためのバスなのだ。

「ええ。伊良部大橋をバスで渡ってみたくて。終点まで行ってみようかと」

「ほう、珍しいね。橋を渡ってみたいだけなら、渡り終わったところで降ろしてあげられるけど、どうする?」

「そこで降りても、帰るとき困っちゃいますから、終点まで行きます」

「そうかい。このバスは15:00発で、佐和田に着くのは15:50くらい。折り返しは16:30か17:00だけど、どっちに乗るの?」

「遅くなると宿の夕飯に間に合わなくなるので、16:30にします」

「そうか、とんぼ返りか。佐和田の浜ってのが近くにあるし、どうせなら伊良部でゆっくりできればいいんだけどね。まあ、しょうがないか」

乗務員さんは残念そうに肩を落とした。こちらも時間に余裕があれば伊良部島を見て回りたいのはやまやまなのだが、あまりゆっくりし過ぎると東急ホテルまで戻れなくなってしまう。例によって、ホテル最寄りの「上地南うえちみなみ」へ向かう宮古協栄バス【4】与那覇嘉手苅線も、1日数便しかない。

「よう、こんにちは」

発車10分前ともなると、平良市街での買い物を終えたアンマーお母さんやら、オジイやらが三々五々乗り込んできた。当たり前だが乗務員さんと乗客は知り合い同士で、交わす言葉も島言葉。半分以上何を言っているのかわからず、消滅が危惧されているとはいえ、こうして沖縄本島以外まで来れば、まだまだ島言葉も元気なものと思う。

余談だが、僕の親戚は富山におり、富山へ帰ると、ネイティヴ富山人同士の会話はやはり半分くらい何を言っているのかわからなかった。とはいえ、3日も滞在していれば、だいたいはわかるようになってくるのは、ス●ードラーニングの賜物だろう。宮古方言も、生きたフレーズを繰り返し聞いているうち、やっぱりスピー●ラーニングできるようになるんだろうか。そうした意味では、生きた島言葉を繰り返し聞ける路線バスという存在は、やはり貴重なものと思う。

「はーい、それでは時間なので、発車します」

15:00、平良港発。共和バス【7】伊良部佐良浜平良線、佐和田車庫行き。僕とオジイ2名とアンマー1名を乗せたマイクロバスは、平良港を後にする。

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「宮古病院から高校生で満席に」

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