九州・沖縄

【沖縄】んみゃーち宮古!宮古空港エアポートバスの将来──宮古協栄バス【5】新里宮国線 #59

支線へ立ち寄る宮国行き

夕刻の下り宮国行きにも乗ってみた。平良(車庫)17:40発→平良港(バスターミナル)17:45→宮国18:20と経て、再び平良(車庫)へ18:37に戻ってきて終着となる。

宮古空港を出る航空便はまだ沢山あるし、用務帰り(那覇から宮古への用事など)にはちょうどいい時間帯のようにも思うが、空港ターミナル前を経由するのは17:00までと決まっているのか、それとも帰宅の足を優先するということなのか、この便は空港を通らない。そのため、一つ手前の「空港入口」から6分ほど歩かなくてはならない。

宮国を経由した戻りは市街地まで行かず、市街地手前の平良(車庫)で終着となるため、市街地→宮国方面への帰宅の足としての役割がメインなのだろう。反対に、午前中の便は平良(車庫)→宮国→平良港→平良(車庫)の順に回るため、宮国→平良市街への用務に適した設定になっている。

平良港バスターミナルで宮国行きを待った。やはり5分ほど遅れて17:50に平良港バスターミナルへ到着したが、ここまでに乗客を6名ほど乗せており、既にそこそこ乗っていた。僕の他に平良港からの乗客はもう1名。

「平良(車庫)まで一周してきたいんですが、よろしいですか?」「はい、わかりました。どうぞ」

男性乗務員は、安全運転命!といった感じで、いかにも職業気質を感じる無骨な表情を浮かべていた。空港のすぐ脇を通るにしては、観光客の扱いに慣れているとは言い難いが、それだけ観光客の利用がない裏返しのようにも思う。

17:51、平良港発。宮古協栄バス【5】新里宮国線、宮国行き。

公設市場前でやはり2名程度乗せ、総勢10名くらいになった。この先もしばらく市街地は続くが、中心と言えるのはやはり公設市場前までで、この先での乗車はしばらく途絶えた。元うえの、合同庁舎前、旧空港前の乗降はなく、通過。やはり滑走路を回り込むようにして、城辺町方面へのメインルートである県道78号へと合流する。

平良港から10分、やや郊外に入った狩俣砕石所前」でドン・キホーテの袋を提げた若者が1名乗車。ここまで来ると景色はロードサイドそのもの。そうした店であっても、バスに頼る乗客は一定数いるのだ。

1区間だけ県道78号を走るも、空港方面へとすぐに右折。空港前の通りは、片側三車線の立派な道路だ。

しかし店はレンタカー屋くらいしかなく、空港ターミナルの移転開業に合わせて新しく造られた道路に過ぎず、まだ市街地の形成が進んでいない様子がわかる。ただ、この道路のゆとりと開発余地は「旧空港前」付近にはないもの。将来の発展のために、わざわざ平良市街の反対側へとターミナルを移した理由は、ここにあるのかもしれない。

「空港入口」での乗降はやはりなく、スピードを落とすことなく通過。空港前の交差点を左折し、県道190号を旧上野村方面へと向かう。ここから先の道路はすべて片側一車線で、だんだんとローカル線の景色になってくる。県道190号はここからラケット状区間の一端である新里まで、ずっと続く。

ガジュマルの大木(街路樹?)に囲まれた県道を飛ばしていく。「マクゾク」「西ツンマー」「東ツンマー」といった珍名バス停が続き、いよいよ沖縄らしくなってきた。「ツンマー」には「積間」の字を充てるらしいが、あまりに読めないということなのか、一般的な表現ではないようだ。

「東ツンマー」がラケットの柄の部分にあたり、ここからラケット状の区間に入る。・・・と思ったら、小さなT字路をいきなり左折し、ラケット状の区間から離れていってしまう。このバスは右回りにラケット状の区間を周回するが、その付け根から東へ2つ先「野原のばる公民館前」まで支線が分岐している。この「野原支線」は、1日7往復(土休日6往復)のうち、昼間の2本と最終1本(土休日運休)を除く4本は必ず経由するため、朝夕のみの支線というわけでもないのが面白いところ。

その野原支線は、かつてのゴルフ場跡地に建設中の陸上自衛隊駐屯地に沿って進む。自衛隊の配備に反対する幟がはためき、物々しさを感じさせる。隊員の住居と思しき真新しいアパートが、整地された土地に並んでおり、かつてここがゴルフ場であった面影はない。

野原支線は、航空自衛隊宮古島駐屯地に突き当たったところの野原公民館前で折り返し。転回場でもあるのかと思ったら、やおら公民館前の公道にバックで進入し、そのまま公民館前の停留場へ停車。そのまま切り返して再び来た道を戻るという、なんともワイルドな折り返しであった。

支線での乗降は残念ながら0で、ここまでの往復はバスにとっても乗客にとっても無駄足になってしまった。ただ、駐屯地のすぐ先には【3】友利線が走っており、【5】新里宮国線を分岐させるよりも、【3】友利線を経由させるほうが合理的なようにも思う。ただ、この野原地区は旧上野村に属していたため、旧城辺町西部を一周する性格を持つ【3】友利線で野原地区を結ぶのは不適当であるのかもしれない。もはや宮古島市として一体化が進む中で上野村役場(宮国)と野原地区を行き来する需要がどれだけあるかは、未知数であるが。

再び県道190号へ戻り、サトウキビ畑の中を走った。サトウキビ畑の景色に見とれていると、やおら「ピーンポーン」と大音量のチャイムが鳴り、降車ボタンが点灯。平良港を出て約30分、18:13の「東青原ひがしあおばる」で最初の降車があり、学生2名が降りていった。周囲は見渡すかぎり農地で、バス停ポールも背高く育ったサトウキビに飲み込まれそうなほど。県道から少し離れたところに家があるのだろう。

まもなく新里の集落へ入り、「新里」停留所を経て、次の「新里公民館前」で3名下車。ここから先、宮国にかけてがラケット状の区間の末端部で、このあたりの集落と平良を行き来する流れは多いようだ。

ここで右折し、島の西~南を半周する唯一の国道:国道390号へ入る。次は「シギラビーチ入口」で、旧下地町の与那覇前浜ビーチと並ぶ宮古島屈指の有名ビーチ、シギラビーチへの入り口であるが、18時過ぎとあっては乗降があるわけもなく通過。3月30日から走り始めた【9】みやこ下地島空港リゾート線の終着「シーブリーズカジュアル前」にも近いが、1.5kmほど離れている。要は、観光の流れからは少々外れているということだ。

「大嶺」停留所で国道390号から南に逸れ、しばらく走ると「宮国」停留所。ここが運行上の分界点といえ、「新里・宮国行」だった方向幕を「平良行」に切り替えた。

宮国でも3名が降りたが、ハプニング発生。平良市街からずっと乗っていた若者が「一万円札しかないんすけど」と堂々と一万円札を出し、乗務員さんは逡巡するも「・・・次お願いします」と、390円の運賃を取らずにそのまま降ろしてしまった。この対応はいただけない。若者には慌てるそぶりが全くなく、高額紙幣をわざと出しての運賃逃れとしか思えなかった。高額紙幣への対応は全国共通の問題と言えるが、全く取らないのもどうかと思う。

宮国から先は「東ツンマー」の合流地点まで県道202号を走る。先ほど南へ外れた国道390号と交差する地点が「上野支所前(※共栄バスの案内では「上野村役場」)」で、定刻であれば18:23到着。かつての上野村役場で、ここで最後の1名が降り、あとは貸切となってしまった。

上野支所到着までに定刻より10分ほどの遅れを出していたが、ここから先の停留所ではほぼ乗車がないことを承知なのか、遅れを取り戻すべく、限界いっぱいのスピードで県道を飛ばした。さほど遅れているような印象もなく、渋滞にはまったわけでもないのだが、元々の時刻設定が厳しいのかもしれない。ただ、きつめの時刻設定にしておかないと、ただでさえ遅れがちな沖縄のバスが、(その遅らせた設定から)さらに遅れてしまうという、悪循環になってしまうのかもしれないが。

空港入口を再び経由し、ドン・キホーテ前の狩俣砕石所前を曲がらず、今度は直進。かなり飛ばしていたが、平良市街で夕刻の渋滞が発生していたこともあり、10分の遅れはあまり取り戻せないまま、18:45頃に平良(車庫)終点へ到着。

そのまま右折して(元)車庫の転回場へと入っていき(※現在の車庫は100mほど南西へ移転)、1往復の運行を終えた。

この平良(車庫)停留所から市街地へは徒歩15~20分を要し、歩いていくには少々遠い。いくら宮国方面からの乗客が0だったとはいえ、逆方面の動きが考慮されていないに等しいとあっては、やはり少々不便な印象を拭えない。新里・宮国地区と平良市街を結ぶ需要に特化しているといえ、このスタンスでは空港ターミナル経由が通学客のいない昼間に限られるのも、無理はない。

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「宮古空港をバスターミナルにしては?」

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