急行らしく快走!
「このバスは、23番、具志川線、急行、具志川バスターミナル行きです。これより先、停車します停留所は、県庁北口、農林中金前、泊高橋、上之屋、第二城間、宇地泊、伊佐、普天間、比嘉西原、山里、中の町、胡屋、コザ、美里入口、赤道十字路、中部病院前、平良川、安慶名、うるま市役所前、西田場、終点・具志川バスターミナルです。その他の停留所には停車いたしませんので、ご注意ください」と、丁寧な自動アナウンスが入った。同様のアナウンスは各停留所を出るごとに入り、急行運転であることを念入りに伝えている。
那覇バスターミナルを出て、次は「県庁北口」。沖縄県庁・那覇市役所だけでなく、リウボウ百貨店の目の前であり、国際通り西端でもあることから、買い物客がここから乗ってくる。「途中停留所にご注意ください、急行です」と乗務員さんが車外スピーカーからアナウンスすると、怪訝な顔をする人も。しかし、その乗客はまたしても多くなく、2名が乗ってきただけだった。しかも、うち1名は「泊高橋は行きますか」と乗務員さんに聞いており、とまりんからフェリーに乗り、渡嘉敷島・渡名喜島あたりの離島へ帰る模様。急行が本来目的とする乗客ではない。
国際通りから逸れ、久茂地経由の独自区間へと入っていく。「農林中金前」は乗降なし、次の「若松入口」は通過。オフィスビルが立ち並ぶ久茂地エリア内でも若松入口は通過となるあたり、速達にこだわった停車停留所の選定であることがわかる。
フェリーターミナル「とまりん」の目の前にあたる「泊高橋」でフェリーのおばさんは降りていき、3名が残るだけになった。泊高橋で久茂地経由と牧志経由が合流するのだが、合流点の泊高橋交差点は「とまりん」を通り過ぎた先であり、牧志経由の泊高橋停留所は、久茂地経由の泊高橋停留所よりもやや遠い。そのため、那覇バスターミナル・県庁北口→とまりんであれば、久茂地経由に乗った方が早いし、とまりんの目の前に着く。そのあたりの事情を、離島の住民らしきおばさんはちゃんと理解しているようだ。
那覇市街地で最後となる次の「上之屋」でオジイ1名とおじさん1名の2名が乗り、計5名となった。オジイの方は「これより先、停車します停留所は、第二城間…」というアナウンスを聞いてそわそわしている。信号停車した合間に「あの、プラザハウス前とまりますか」と恐る恐る乗務員さんに聞いていた。「止まりませんので、比嘉西原で降りてください」と返され、オジイはしょんぼり。「プラザハウス前」とは、比嘉西原の次の停留所であり、その間500mほど。歩いてもいい距離だし、比嘉西原で降りても後続の各停バスは頻繁に来る。ただ、バスを乗り換えても運賃は通算にならず、急行と各停を乗り継げば割高な運賃になってしまうのは痛いところ。
第二城間、宇地泊、伊佐にかけては、沖縄県内で最も交通量が多く、最も道路整備が進んだ国道58号を飛ばしてゆく。
各停バスが、停留所のある左車線から離れられず、交差点の立体交差も使えない(交差点近くに停留所があることが多く、立体に乗ってしまうと停車できなくなる)のに対し、急行バスはそんなこと御構い無しに右側車線を60km/hの制限速度いっぱい、交差点も立体交差経由のノンストップ。この「右側車線キープ、交差点は立体交差経由」であることが那覇─コザの25kmで15分短縮を成し遂げている要因であることを実感する。
バスは快調に国道58号を飛ばしてゆく。伊佐で北谷町・恩納村方面へ向かう国道58号から分かれ、普天間・コザ方面へ向かう国道330号に入っても右側車線キープは続き、時折各停バスを追い抜いていく。まるで、大都市の複々線区間を走る急行電車のようだ。ここまでずっと5〜7分に1停留所の割合でしか停車停留所がなく、走り続けているイメージがある。
那覇バスターミナルを出て以来乗客は少なかったが、それが一変したのが14:28着の普天間(なぜか『プラザハウス前』へ行くオジイも普天間で降りていった)。
米軍普天間基地に囲まれた「基地の街」であり、停留所の隣はすぐ米軍普天間基地であるものの、停留所至近にある沖縄県立普天間高校の学生が30名ほど乗り込み、車内はあっという間に混雑状態となった。普天間高はコザ周辺の高校よりも偏差値が高いため、バスを利用した通学も多いのかもしれない。
普天間を出ると宜野湾市から北中城村に入る。沖縄県内随一の規模を誇る「イオンモール沖縄ライカム」に隣接した「比嘉西原」では、通学生が何人か下車。14時過ぎの中途半端な時間とあって買い物帰りの乗車はなかったが、上り那覇方面では何人かバスを待っていた。坂の上のイオンモールとは、長い階段で結ばれており、一応バス利用の買い物客にも配慮はされている模様。かなり限られた本数ながらイオンモール内へ乗り入れるバスもあるが、本数は国道330号沿いの比嘉西原の方が圧倒的に多いため、階段経由がメインになってしまっているのは惜しい。エスカレーターでもあればいいのだろうが。
比嘉西原までは5〜7分おきの停車を繰り返してきたが、次の山里からは沖縄市内となり、停車停留所も増えてくる。山里の次はいよいよ沖縄市中心部、その名も中の町であるが、通過する諸見、園田も景色は完全に市街地。あくまで都市間連絡を優先にし、市街地内の需要はいくらでも走っている各停バスに委ねているという判断であろう。中の町、胡屋は那覇市内を出て以来の連続停車であり、普天間からの高校生も多くが降りていく。胡屋からは2名ほど乗車もあった。
エイサーの町・沖縄市を象徴するコザ・ミュージックタウンが見下ろす胡屋(14:40)を過ぎると、沖縄市の中心商店街となるが、アーケードの規模に比して活気がない。クルマ社会の沖縄ゆえ、買い物客はイオンモールライカムなどに取られてしまっているのだろう。かつては買い物帰りの乗客がたくさんいたことだろうが、いま胡屋の停留所でバスを待っているのは、老人か外国人ばかりである。
嘉間良、安慶田を通過し、次はいよいよコザ。定刻なら14:46だが5分遅れの14:51着となり、やはり多くの普天間高校生が降りていく。
だが、まだ少ないながらも高校生が5名ほど残っている他、それ以外にも5名ほど乗客がおり、10名ほど乗っている。上之屋を出た時よりも乗客が多い。【331(急行)】【31】はここで右折してルートが分かれ、各停となる。【777】もここから各停となるが、【23急行】は全区間急行のため、もう20分ほど先の終点・具志川バスターミナルまで急行運転が続く。
中の町・胡屋・コザといった沖縄市中心部を過ぎると乗客の流れ、またクルマの流れともやや薄れ、淡々と走ってゆくようになる。
安慶名で石川・金武方面への【77】名護東線などのルートを分けると終点・具志川バスターミナルは目前。具志川よりも先へ行く、【777(急行)】【27】屋慶名バスターミナル行きなどは、安慶名で分かれたのちまっすぐ具志川バスターミナルを経由して屋慶名方面へと向かうが、ここが終点となる【23】具志川線は「うるま市役所前」を経由するため、いったん具志川バスターミナルに背を向けて、「コ」の字を描く迂回ルートを辿る。
しかしこの迂回ルートの中でも急行運転は続いており、手を上げて呼び止めようとした乗客を、乗務員さんがジェスチャーで断っていた場面も見られた。
那覇バスターミナルから(定刻)1時間17分、実際には5分遅れのまま、15:12に具志川バスターミナルへ到着。終点まで残ったのは8名ほどであった。約35kmを1時間20分程度で走り抜き、その表定速度は26.3km/hほど。急行料金不要にしては、そこそこの速さと言えよう。大都市の地下鉄と同じくらいである。
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急行が沖縄のバスを変えるか?