九州・沖縄

【沖縄】快走!那覇-コザ急行バス──琉球バス交通【23急行】具志川線 #79

急行が沖縄のバスを変えるか?

以上、【23急行】の乗車ルポであった。時刻表の上では15分短縮程度に止まっているが、実際に乗った感覚ではそれ以上に速いように感じられる。左車線をバス同士で団子になって走るようなこともなく、立体交差をスイスイと抜けていく快調な走りからは、各停バスのイライラがウソのようだ。ただ、課題点もないわけではない。

まず、なんと言っても本数が少ないこと。各停バスが5〜10分間隔に走っている中にあって、約1時間に1本はいかにも少ない。今回乗った【急行23】にしても、那覇市〜沖縄市といった都市間連絡の利用者は殆どおらず、多くが市内の区間利用であった。これでは急行の本来のメリットが活かせず、「たまたま急行が来たから乗った」以上の理由を見出せない。せめて那覇バスターミナル00・30分発に揃えるとか、もう少し基幹系統らしい存在感が欲しいところだ。

もう一つは、各停バスとの運賃通算ができないこと。「プラザハウス前」で降りたかったのに間違えて急行に乗ってしまったオジイのように、「途中まで急行に乗って、最後は各停に乗り換える」という利用法に、現状では応えることができない。ICカード・OKICA利用者だけでもいいから、急行・各停乗り継ぎでも、各停乗り通しでも同一運賃とするよう、認めるべきだろう。

この他、急行と各停の行き先表示が見分けにくかったり、停留所でも急行の時刻が一般便に埋没してわかりにくいとか、細かな不満はあるにはある。

しかしながら、過去記事でも触れたように、その懸念は解消に向かっている。沖縄県では数年のうちに路線バス網を再編するとしており、急行バスを基幹とした基幹系統と、伊佐・コザなどで基幹系統からの接続を受ける支線系統に分離することとなっている。これにより、各所から団子状態で那覇へ向かう無駄を省き、急行運転による速達効果を最大限に引き出すとしている。その際、本数が少ないのは増発されるだろうし(那覇─伊佐間では10分間隔、那覇─コザ間では20分間隔程度が想定されている)、急行・各停の乗り継ぎを認めるならば、運賃制度の変更も避けては通れないだろう。現状、宇地泊だけは停留所が立体交差に近いために立体交差を経由しないが、これも近いうちに停留所の移設によって解消される見込みはある。

もう一つ変わる点があるとすれば、定時運行率の向上である。現状、各停だけが各所からワラワラと那覇へ集まってくるのであれば、遅延に対しても大らかになってしまうのかもしれないが、急行と各停の接続を前提とするならば、定時運行による確実なバスの接続をモットーにしなくてはならず、定時運行のニーズが高まることとなる。現状、始発から明確な理由もなしに遅れたりするのも珍しくないなかで、意識改革のきっかけになるだろう。

急行バスの知名度はまだ低く、県民生活に浸透しているとは言えない。しかしながら、急行バスの運行継続による実績の積み重ねと、得られるデータの分析は、バス路線網再編に向けて避けては通れないものだ。ぜひその分析を克明に活かし、早くて便利なバスネットワークの幹に育ててほしい。

鉄道がゆいレールただ1本しかない沖縄。日本初の都市型BRTが走る街は、実は那覇なのかもしれない。スピード自慢の急行バスに揺られ、バスがひっきりなしに出入りする新・那覇バスターミナルを見ていると、あながち夢物語ではないように思うのだ。

(おわり)

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