九州・沖縄

【沖縄】西の果て・与那国島へ飛ぶ”うちなーの翼”に乗って――RAC・琉球エアーコミューター 石垣―与那国線 #75

最果てへ飛ぶ鶴丸のプロペラ機

2019/5/4(土)から5/5(日)にかけ、与那国島を訪れた。まずは石垣バスターミナル8:30発→石垣空港9:05着の東バス【4】空港線・石垣空港行きで、石垣空港へ向かった。ゴールデンウィーク中だけあって、石垣空港の保安検査場は多少混雑していたが、出発45分前となる9:20には、最も保安検査場から遠い8番ゲートへ到着することができた。

出発15分前となる9:50ごろ、搭乗開始の案内がなされた。いつものようにQRコードをタッチして改札機を抜けると、「飛行機まで歩いてお進みください」との案内が。これは…

▲ボーディングブリッジへ通じる通路がシャッターで閉じられていた

与那国行きのボンバルディアDHC-8-Q400CCはステップを地面に下ろし、搭乗客を迎えていたのだ。

▲扉を開けて待っている与那国行き。地面から見る航空機は大迫力!

プロペラ機は初搭乗だったため面食らったのだが、プロペラ機はジェット機と違い、翼が客席よりも上にある。その上にある翼からプロペラエンジンがぶら下がるような形をしているため、機体の高さがかなり低く、地表面スレスレと言っても良いほど。

つまり、機体中央から生える翼にジェットエンジンがぶら下がっているために、ボーディングブリッジやタラップを要するジェット機と異なり、プロペラ機は乗降口が地表面スレスレのため、ボーディングブリッジからの搭乗ができないというわけだ。そのため、搭乗客はこうして駐機場の地面を歩き、飛行機の扉がそのままステップになっているところに足をかけ、そのまま搭乗するという流れになる。

▲地面から直接機体へ乗り込むのは初めての経験だった

成田空港のLCCはタラップ使用が多いため、駐機場を歩くという経験は初めてではなかったものの、それでも地面から間近に飛行機を見上げると、コミューター路線の座席数わずか50席のプロペラ機とはいえど、物凄い迫力である。プロペラ機が初めてという観光客も多いようで、皆搭乗前にDHC-8-Q400CCの前で、思い思いに写真を撮っている。

▲機内にはJAL標準仕様に近いレザーシートが並んでいた

わずか50席だけあって、機内は広くはない。通路を挟んで2席×左右×12列+2席の計50席が並んでいるだけで、当然クラスJなどの上級グレードの座席はなく、全席エコノミーである(ただし、プレミアム会員向けの優先搭乗は存在する)。また航行時間が短いため、モニターなどの遊興設備はない。

通路でも大人が立つと擦りそうなほど天井が低く、ハットラック式の荷棚もかなり控えめなサイズ。通常ならば手荷物預け不要なサイズのリュックであったが、高さがギリギリだった。

▲ここまで来ないと見られない、DHC8-Q400CCの安全のしおり

けーらんねーら、くよーんなーら」

CAさんから石垣方言での挨拶があり、モニターがないため安全設備の説明の実演が始まった。音声のみ自動で、説明用の酸素マスクなどを用いて説明が進んでゆく。モニターしか見たことが無かったので、新鮮に映る。

▲間近に見るプロペラは、小型機と言えど結構な迫力である

安全設備の説明が終わったあたりで、いよいよプロペラエンジンが起動。ジェットエンジンと違っていきなりMAXになるということもなく、文字通り扇風機の羽がブーンと音を立てて回るような、思ったよりもずっと静かなものだった。確かに、この静かさで高速性能を両立できれば、ANA大阪・伊丹─高知線のように、ジェット機からプロペラ機へ置き換えられる場合も出てくるだろう。プロペラ機だからといって時代遅れとかそういうことはないということを、再認識した。

定員50名に対し、半数ほどの座席が埋まった。搭乗率は50%で、GW期間中といえど芳しいものではない。最果ての島、与那国まで足を延ばす観光客は、石垣島を訪れる観光客のうち、1%もいないのではないか…と思う。ただそれだけに、窮屈な機内で遠慮がちに過ごすといった感じではなく、写真を撮ったりおやつを食べたり、皆思い思いに過ごしている。普通の飛行機より、どこか和やかだ。

いよいよ離陸。さすがに離陸の際の加速は背もたれに押し付けられるような勢いを感じたが、やはりジェット機のそれよりはだいぶ穏やかなものだった。10:00、石垣空港発。

▲石垣市街地を望む(写真は復路)

離陸すると、石垣島南方の海上を海岸に伝ってゆく。石垣市街地を右舷眼下に望み、次いで平坦な地形の竹富島、ジャングルに覆われてこんもりとした印象を与える西表島が、やはり右舷へと過ぎてゆく。島と島の間に散在するサンゴ礁の群落も見える。これだけ高さがあると、海底の深いところと浅いところの差が際立って見え、浅いところを深い一筋が貫いているような部分もある。ああいうところを、八重山方言におけるサンゴ礁内の水路を示す「ミゾ」と呼ぶのだろう。

西表島を過ぎたあたりで島はなくなり、あとは洋上飛行が続くのみ。水平飛行はわずか5〜10分ほどで、この間に機内販売もこなすからCAさんは多忙である。なお、これだけフライトタイムが短くては、勿論のことドリンクサービスはない。

降下体制に入ると、与那国島東端の東崎、次いで祖納の集落が見えてきた。与那国空港は東部の祖納と西部の久部良のちょうど真ん中あたりに位置し、東西方向に2,000mの滑走路を持つ。着陸の経路としては、出発の際の旋回を避けるため、いったん島の北方を通り過ぎてUターンし、久部良側(西側)からのアプローチとなる。

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まるで特急停車駅?与那国空港

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