九州・沖縄

【沖縄】バスで行く小さな無人島への旅- 東陽バス【38】志喜屋線(2) #34

高齢者のお買いものを支えるローカルバス

【38】志喜屋線は、先ほど辿った国道331号、そして与那原からは329号を淡々と走った。鉄道が殆ど無い沖縄では、路線バスが幹線交通も支線交通も両方担うため、後部座席にどっかりと座り、恐らく那覇まで降りない乗客もいれば、高齢者を中心に1km乗ったかどうかくらいの短距離で降りてしまう人もいる。

東陽バスは初乗り1kmまで160円、2km170円と近距離区間が安く(但し2.1km~3kmは230円といきなり上がる)、こうした高齢者の「ちょっとそこまで」の需要も掬い上げている。県内のスーパーマーケットチェーン、タウンプラザかねひで佐敷店の前にある「浜端はまばた」では高齢者の買い物客が数人降りて数人乗り込み、【38】志喜屋線が「お買い物バス」的な役割も担っている様子が窺えた。浜端から乗り込んだ買い物帰りのオバアは、やはり2km足らずくらいのうちにほぼ降りた。バスに乗ってでも、広くて快適なスーパーへ買い物に行く方が、近くの店よりも品ぞろえはいいし、何カ所も専門店を回らなくて済む。1時間に1本という運転間隔は、確かにスーパーで買い物をして、ちょっと休憩するくらいでちょうどいい時間と言える。

そうしたオバア達は与那原あたりでいなくなった。やはり331号と329号が合流する与那原からは交通量が増え、夕方に向けて那覇へ向かうクルマで、行きよりも道路は混雑していた。このあたりから降車は減り、夕刻の那覇へ遊びに行くのか、それとも家へ帰るのか、乗る一方になってきた。南風原、国場と経るにつれて様々なところを始発とするバスが集まり、どんどん束になっていくため、中には「開南経由」の【38】志喜屋線を見送る人もいる。開南経由はこの先の古波蔵で右に折れ、国際通り(牧志)に近い開南あたりに寄ってから上泉(那覇バスターミナル)を終点とするが、中には古波蔵を直進し、那覇バスターミナル方面へ直進していく系統もある(壺川経由)。それを待っているのだろう。

予想通り、開南で国際通り方面へ向かうであろう人々が降りていった。開南から上泉までは各所から集まってくる開南経由のバスが連なり、一般車よりもバスの方が多いのではないかというくらい。那覇高校前、県庁南口でもそれぞれ何人か降ろし、その続きが上泉終点。15人ほどが列を成し、運賃を払って降りていく。結局、国場→古波蔵あたりが最混雑区間であり、30名ほどが乗っていた。その後は那覇の都心部をかすめるあたりでパラパラと降ろしていき、上泉まで残ったのはその半分ほどとなった。

*  *  *

豊かな自然と文化が息づく知念半島と那覇を結び、海に沿ってのんびりと走る【38】志喜屋線。斎場御嶽で琉球王朝の威光を感じるもよし、久高島へ渡って創世神話に思いを馳せるもよし、安座真サンサンビーチや知念海洋レジャーセンターでマリンレジャーに興じるもよし、与那原あたりで県営鉄道の遺構を巡るもよし。

那覇と志喜屋の1時間余りの間に、これだけ楽しみが詰まっている【38】志喜屋線。沖縄の自然と文化を巡るバス旅に、あなたも出かけてみてはいかがだろう。

(【38】志喜屋線編 おわり)

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