九州・沖縄

【沖縄】遥かなる”果てうるま”への旅路──安栄観光波照間島航路 #74

欠航多発の船…頼みは貨客船?

さて、その波照間島へは、石垣港離島ターミナルからの高速船が唯一のアクセス手段となる。石垣港8:00・11:50・15:30発、波照間港10:00・13:25・17:20発の1日3往復で、夏季観光シーズンには石垣港7:20発・波照間港8:40発の1往復が加わる。

観光客が集中する下り始発の石垣港8:00発・上り最終の波照間港17:20発およびその送り込みとなる波照間港10:00発・石垣港15:30発は大型双胴船「ぱいじま2」で運航され、所要は1時間30〜40分ほど。需要があまり大きくない昼間便は小型高速船での運航となり、所要1時間〜1時間10分ほどとなる。なお、昼間便のみ予約がある場合は西表島大原港を経由し、竹富町内の連絡を図っている。

しかしこの高速船、欠航が多いのである。西表島と波照間島の間には強い海流があるため、この海流を横切る時に猛烈な揺れに遭う。北風(カーチバイ)が吹き付ける11〜2月、および梅雨の6月あたりは欠航率が高く、平均が5割を超える月も珍しくない。しかし、海況が安定する3〜5月あたりは1年で最も欠航率が低く、最大でも1割程度。つまり、ゴールデンウィークあたりはその気候も相俟って、波照間島観光に最も適したシーズンなのだ。ゴールデンウィークほぼ全日を八重山観光に宛てた中で、波照間島に行かない手はなかった。

ただ、高速船が欠航となっても、波照間島民の生活に必要な物資を運ぶ貨客船(フェリー)は運航することが多い。貨客カーフェリー「フェリーはてるま」および高速貨客カーフェリー「ぱいかじ」の2隻が、高速船と同じ安栄観光の手によって火・木・土および第2・第4金曜のみ、石垣港9:00発→波照間港11:00着・波照間港14:00発→石垣港16:00着で運航されている。

しかし、定員は52名と高速船に比べてかなり少ない上、石垣港の発着地も石垣港離島ターミナルではなく、徒歩10分ほど離れた八島町貨物事務所からとなる。これは、貨客船の客席は貨物の付き添いを使命としているためで、観光客の利用は基本的に想定されていないからだ。また、ただでさえ揺れる高速船よりもさらに揺れると言われており、予め旅程に組み込むのはオススメできない。

ただ、高速船欠航時の保険となるのは確かなので、貨客船が運航する火・木・土曜に合わせて波照間島に宿泊する旅程を組むと、到達可能性が上がると言える。現に、高速船欠航時は貨客船の乗船券が売り切れとなることも珍しくないそうだ。

波照間航路は現在安栄観光の独占となっているが、2011年までは合資会社波照間海運による運航であった。2011年に安栄観光が波照間航路に参入し、競合に耐えられなくなった波照間海運は波照間航路の運営から撤退。安栄観光と多くの航路で共同運航する八重山観光フェリーは、唯一波照間航路のみ参入していない。

このため、八重山諸島の航路群の中で唯一安栄観光の独占となっているのだが、その欠航率の高さは地元でも問題視されているようだ。2018年には八重山観光フェリーが波照間航路に参入するとの報道が出たものの、2019年7月現在、そのような動きは見られない。

石垣―波照間航路 観光フェリーが参入検討 http://www.y-mainichi.co.jp/news/33160/

発言の中では、波照間航路は安定化がなされておらず、波照間島民は常に船の運航を気にしながらの生活を強いられている、それをなんとかしたい─というような八重山観光フェリー側の声が紹介されていたが、もっともな意見だと思う。それだけに、共同運航化が進まないのは大変に残念である。

このような状況の中、2019年1月に安栄観光が波照間海運から引き継いだ「フェリーはてるま」が故障し、波照間島への物流が途絶えるという事態を引き起こした。

貨客船が故障で運休 ガソリンの供給制限も http://www.y-mainichi.co.jp/news/34761/

島の基幹産業である製糖業の出荷に影響を及ぼすといった事態にまで発展したものの、現在は収束している。しかし、フェリー1隻が故障しただけで、離島の生活はあっという間に兵糧攻めにされてしまうのだ。安栄観光の努力を期待するのはもちろん、欠航が多い「ぱいじま2」よりも波浪に強い船体を導入してもらうなど、八重山観光フェリーの参入によるいっそうの航路安定化を望みたいところでもある。

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定着しない離島間航空路線

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